このアワードが何のためにあり、何を約束し、次に何をつくるのか。
規則はレギュレーションにあります。ここにあるのは、その背後にある意志です。 まだできていないものは、できていないと書いてあります。
ここに書いたことは、実行します。
生成AIクリエイティブ時代のアワード文化をつくっていこう
Let's build a new awarding culture in the generative AI creation era
2022年のStable Diffusionのオープンリリースから、4年が経過しました。
「つくる人をつくる」をビジョンに、書籍や記事の執筆を毎日行ってきました。 もう大型書籍が4冊、マガジンが28号、ブログは1,000アーティクルを超えました。
X(旧Twitter)を見ていると、毎日、素晴らしい作品が目の前を流れていきます。素晴らしい作品はシェアされ、 ブックマークされ、ほんのひととき注目を集めます。
すごいな! いいな! かわいいな! どうやって作ったんだろう……!?
しかし、それらはものすごい勢いで流れていきます。文字どおり、フローしているのです。
これらの作品は、また新たな作品をつくるための刺激となり、私たちAIクリエイティブ分野を愛する人々の経験や、 文化的な土壌となっていくでしょう。
メディアの歴史から俯瞰すると、絵画や写真、商業芸術や出版芸術とは異なり、生成AIは世界同時的に進行しているようです。
私たちを言語や地域によって分割してきた壁は、もはやなくなりつつあります。その代わりに、これまでの クリエイティブ分野に存在していた大きな氷山が融解し、ひとつの大きな海が広がっています。
そしてクリエイティブAIの使い手は、いまはまだ小さな舟に乗っています。しかし、その舟なら、 どこまでも自由に旅をすることができます。

小舟だからといって、孤独に航海する必要はありません。異なる文化、異なる感覚、異なる技術を持つ クリエイターたちが、それぞれの舟で同じ海へ漕ぎ出し、互いを見つけ、つながることで、やがて大きな船団になります。
世界的な大企業が持つ強いAI技術やツールも、小舟には重すぎる荷物ではありません。進むべき航海や挑戦の 推進力はAPIクレジットとして提供されます。新たな画材、新たな帆やエンジン、燃料の使い手を、 そして新しい旅へ送り出す港を作るロールがあるからです。
誰かが所有する一隻の豪華客船に全員で乗ることも、大切なことです。大きな組織で大きくて快適な旅を するために、より組織のインテリジェンスを高めていかねばなりません。一人ひとりが、AIを使って コミュニケーションの壁を解かし、力を合わせ、互いの挑戦を守り、より遠くまで快適に進む。 それも素晴らしいことです。
私たちがまず、認めたいのは、一人ひとりの独立した、自由なクリエイターが、自分の舟のまま 自分の羅針盤で参加できる大船団——The Creative Free Fleetです。
THE CREATIVE FREE FLEET
Small boats. Free creators. One great fleet.
小舟から、自由な大船団へ。 / From small boats to a great free fleet.
融解した氷山のあとに残された山頂は、広い土地でも高い山でもなく、「たくさんの小さな島」に なっているかもしれません。その一つに降り立ち、そこで一生を賭けた作品をつくり続けることも、とても大事なことです。
文化的なこだわりや感覚こそが、人間に残された最後のクリエイティビティかもしれません。
AICU Awardは、このようなメディアの歴史において「世界に向けた挑戦」を称賛するコミュニティとして誕生しました。
AIを使って素晴らしい作品をつくる。その挑戦や試行錯誤を深く理解し、賞賛できるのもまた、 自らAIクリエイティブに向き合ってきた人々です。
過去の産業や技術、肩書や立場はいったん忘れ、フラットに「人の心を動かす作品とは何か」を考える。 そのための場を、クリエイティブAIの使い手自身の手でつくってみたい。
批評的に、建設的に、そしてリスペクトフルに。
歴史に名を残すべく挑戦する多くの人々が、素晴らしい作品を年表に刻み、互いに賞賛する。 その積み重ねによって、Web4時代における人類の営みを探究するアカデミーとなり、 人類の未来をより実りあるものにしていきましょう。
生成AIは、企業のためだけにあるものではありません。どれほど優れた技術も、それを使い、試し、驚き、工夫し、 作品へと育てる人がいて、はじめて文化になります。
AICU Awardでは、この考えに賛同する多様な企業や団体にお声がけしています。
クリエイティブAIを応援したい企業。強い技術やツールを持っている企業。たくさんのユーザーとともに サービスを育てている企業。そして、多くの読者へ新しい表現を届けているメディア。
そのどれもが、クリエイティブAIの良き使い手とつながりたい、その文化をともにつくりたいプレイヤーです。
協賛は、企業がアワードの外側からクリエイターを支援するだけの関係ではありません。技術をつくる人、 道具を使う人、作品を届ける人、作品を受け取る人が同じ場所に集まり、互いの仕事と挑戦を理解するための接点です。
資金だけでなく、制作ツール、APIや計算資源、機材、発表・展示・上映の場、翻訳、教育、広報など、 さまざまな形の参加を歓迎します。
強い道具が良き使い手と出会い、その使い手から生まれた作品が、また次の技術と文化を育てていく。 その循環をつくることが、AICU Awardにおける協賛の意味です。
同時に、協賛によって作品の評価が買われることはありません。協賛関係を明らかにし、 本賞の審査とパートナーによる賞を区別し、審査の独立性と公平性を守ります。
生成AIクリエイティブの歴史を、使い手とともにつくる企業、団体、教育研究機関、コミュニティを募集しています。
投票やコメントは消費ではありません。作品と、つくった人への貢献(contribution)です。
数え方も呼び方も、そのように扱います。貢献した人には名前があり、その貢献は見えるようにします。
作者を励ましたコメント1件は、このアワードにとって応募1件と同じだけの価値があります。 時間を割いて見て、反応してくれた人を「観客数」と呼ぶことはしません。
コメントはすべての言語で受け付けます。翻訳している7言語だけではありません。
何かを応援するために英語で書かなければならない、ということがあってはいけません。
絵文字は一級市民です。人が持っているいちばん速く、正直な反応であり、あらゆる言語の壁を越えます。 入力欄では絵文字を隠さず、使いやすくします。
自動翻訳は間違えます。そして間違えられるのは、誰かの作品です。
自動翻訳されたテキストには、必ず報告の導線を付けます。作者はいつでも自分の作品の翻訳を引き取れます。 作者が手を入れた時点で自動翻訳のラベルは外れ、作者のものになります。
作品がXやYouTubeなどにある場合、公開されている再生数やエンゲージメントを取得して併記します。
これは票ではありませんし、票になることもありません。
100万回再生された作品と200回再生された作品は、同じ分野、同じ条件で並びます。数字はあくまで文脈です。 その作品が、すでに世の中で何をしたのかを伝えるための記録です。
優秀作品は、cert.aicu.aiにCertificateとともにアーカイブされます。
何が応募され、誰がつくり、どのような許諾が与えられ、いつ、何を受賞したのか。リンクできて、 他者が検証でき、作品が最初に発表されたサイトよりも長く生きる証明です。
賞は、授賞式で名前を呼ばれて終わるものではありません。
Certificateは、その人が何をつくり、どのような評価を受けたのかを、インターネット上で検証できる実績として 残します。作者はそれを自分のポートフォリオやプロフィールから示し、次の依頼、採用、共同制作、展示、上映、 ライセンス契約へつなげることができます。
各作品ページには、作者への明確な連絡導線と、何をしてよいのか、どのような条件なのかを表示します。 まず普通の言葉で、次にライセンスとして示します。
権利は作者のままです。賞を受けたことで、著作権がAICU Awardや協賛企業へ移ることはありません。
そのうえで、作者が「いいですよ」と言いやすくなること、受賞という実績を証明できること、 次の仕事を受けられること、そして作品の上映、再利用、ライセンス、PPV、生成利用などから 正当な収益を得られることまでを仕組みにします。
AICUの生成商用・原作者還元ライセンス(GC)では、 著作権そのものを売るのではなく、認証された作品やキャラクターが生成に使われるたびに、原著作権者へ収益を 還元します。誰が、いつ、何から生成し、どれだけ還元されたのかという来歴も記録し、検証できるようにします。
受賞Certificateの実例は、C2606-1で確認できます。
誰にも確認できない賞は、賞ではありません。作者の未来につながらない賞も、私たちがつくりたい賞ではありません。
受賞を記録にする。記録を信用にする。信用を次の仕事と収益につなげる。
ここが、このアワードを本物にする部分です。
映画祭の本当の成果物は、授賞式だけではありません。そのあとに続く100の小さな上映会です。
上映用パック、作品ごとに記録された許諾、そして「あなたの作品が、どこで、何人に上映されました」と 作者へ伝わる仕組みをつくります。
授賞式後のPPVアーカイブを開発します。催事の収支とは分けて管理します。
目的は売上そのものではありません。発表された夜のあとも作品が観られ続け、 観るという行為が生み出した価値を、作品をつくった人へ届け続けることです。
今回の取り組みは、まだ初年度です。
初年度の審査は、個人協賛として参加するコミュニティ審査員と、みなさん自身による投票、つまり 集合知(the wisdom of crowds)の力を借りて行います。
ただし、協賛によって受賞結果が買われることはありません。コミュニティ審査員と一般投票の役割、集計方法、 審査基準を明らかにし、作品を評価する場としての独立性と公平性を守ります。
そして次年度からは、作り手のみなさん、そしてこのアワードで賞を獲得したクリエイターのみなさんにも、 審査や講評へご貢献いただきます。
作品をつくった経験を持つ人が、次の作品を見つけ、その挑戦を理解し、言葉を返し、称える側になる。 受賞者が、次の挑戦者を迎える側になる。
これは、研究者が互いの研究を評価し、議論し、次の知を育てていく、アカデミックな学会や国際会議にも 通じる仕組みです。
一度きりの審査員が外側から作品を選ぶのではありません。つくる人が評価に参加し、評価された人が 次の評価を支え、その経験と批評がコミュニティに蓄積されていく。私たちは、この互助的な仕組みを 「アカデミー」と呼ぶにふさわしいものへ育てます。
異なる文化、異なる技術、異なる感覚を持つ素晴らしいクリエイターたちが、最高のコンテンツ、表現、実験、 そして挑戦を持ち寄り、互いに共有し、批評し、称え合う。
AIでつくる人が、AIでつくる人を見つけ、育て、歴史に刻むアカデミーをつくります。
今年の受賞者のみなさんには、ぜひ次年度の審査と講評に力を貸していただきたいと思います。
受賞はゴールではありません。次の作品と、次のクリエイターを支える側へ加わる、その始まりです。
上に「つくっている最中」「これから」と書いてあるものは、まだできていません。
しかし、ここに書いたことは実行するためにWebに書いています。
できてから発表するより、構築中(Building)であることを示しながら、大きなことをみんなで作った方がいい。
行動規範(Code of Conduct)に共感した人、この設計図が面白いと思った人で、作り手も、 観たい人も、売りたい人も、「三方よし」で実現すると決めたことです。
for creating people who create, Web4Good, AI4Good.
International AI Creator Award — Founder
Akihiko SHIRAI, Ph.D.